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工法の仕組み

1.ネコヤナギ・エコ工法(略称)の施工順序

本工法の適用は、既設の護岸を原則としておりますが、新設の護岸への適用も可能です。
新設の場合はここでは省略しますが、既設護岸への施工手順は図-1のとおりであり、以下に基本的事項とその内容を整理します。

【手順1】植栽位置に対してコアボーリングマシーンを護岸面に垂直にセットし、裏込め材に達するまで穿孔して植栽孔を設ける(図-1⓵)。

【手順2】竹ポット内に用土(川砂利)と挿し木を、上部に用土押え材をセットし、麻紐を用いて緊結する(図-1⓶、⓷:竹ポット構造体作製)。

【手順3】植栽孔内の所定位置まで用土を入れ、吸出し防止材や竹ポットを挿入すると共に間詰材で充填し、竹くさびを用いて護岸面に一次固定する(図-1⓸)。

【手順4】発根と萌芽、成長による緑陰が完成する(図-1⓹、⓺)。

ネコヤナギ・エコ工法の実施手順(既設護岸の場合)
図-1:ネコヤナギ・エコ工法の実施手順(既設護岸の場合)

2.適用場所は?

本工法の適用場所は、以下の条件を満足するような設定が必要です。

(1)自然条件に対して

  • ◇感潮区間は、対象外(ネコヤナギが生育しない)
  • ◇ネコヤナギの自生している河川が原則
    (なお、対象河川に自生地が無い場合、植物専門家の意見では、半径10km以内の範囲に自生している河川が存在している場合は、それを採取し移植しても問題ないとのことである)
  • ◇気象条件は特に制限はないが、日照が得られること

(2)環境条件に対して

  • ◇掘込み河道またはこれに類似する河道が原則
  • ◇護岸勾配、護岸高さは、穿孔作業が可能な範囲(作業足場の必要な場所を含む)
  • ◇増水時に水衝部とならない場所
  • ◇平常時での水際流速が2m/sec程度以下の場所
  • ◇水深が3m以下の場所
  • ◇増水後に土砂の堆積が生じない場所
  • ◇護岸背面が岩盤でない場所
  • ◇護岸天端面が広範囲なコンクリート舗装等で覆われていない場所

3.植栽施工の時期は?

本工法による植栽施工の最も望ましい時期は、下表のとおりです。なお、植栽可能時期とは、竹ポットへの植込みを行って置き、それを利用する場合の期間です。

植栽施工の適期及び不適期期間
表-1:植栽施工の適期及び不適期期間

4.植栽計画の標準
(1)植栽区間延長

植栽区間延長は、可能な限り1区間50m~100m(植栽本数25本以上)となるような設定を希望します。これは水辺の環境改善効果をより向上させることを実績で確認しております。なお、25本未満となる場合は、公表単価の割り増しが必要となります。

(2)植栽間隔と高さの標準

植栽間隔と高さの標準は、図-2を基本としています。なお、範囲を持たせていますが、植栽の利用目的に対する配置方法や対象河川の増水頻度、または護岸背面の地下水状況に対応するように配慮しています。

  • ◇植栽間隔は、自生のネコヤナギにおける葉張り幅を参考としています。
  • ◇植栽高さは、河岸における自生高さの測定結果と、植栽後に必要となる十分な水分補給高さを考慮しています。なお、十分な水分補給高さは、植栽孔の基底部と河川の平水位との関係から設定しており、植栽に用いる用土(粒径7mm以下の砂礫)の空隙上昇による毛細管現象高さ=35cm程度を参考としています。
植栽間隔と高さの標準
図-2:植栽間隔と高さの標準

5.護岸への穿孔

本工法の適用場所は、前項に述べているように既設護岸が原則です。したがって、河川の平水位等を考慮して植栽高さを設定した後は、図-3に示すような植栽孔を設け、吸出し防止材や竹ポット構造体を挿入・固定することで植付けが完了します。
 ここでは、その植栽孔の穿孔について述べます。

植栽孔と竹ポット構造体の挿入・固定
図-3:植栽孔と竹ポット構造体の挿入・固定


(1)穿孔方法

護岸への穿孔方法は、表-1に示すような各種機器による作業性・環境適合性等の比較を行うと共に、機器が小型かつ簡単で取扱い易いことと(特に搬入路を必要としないこと)、経済性を考慮して写真―1に示すコンクリート穿孔機の利用としています。

植栽孔の開削方法に対する作業性比較
表-1:植栽孔の開削方法に対する作業性比較


(2)穿孔深さと孔径
写-1:穿孔機とその作業

 

  • ◇穿孔深さ:護岸構造に応じて250mm~500mm。「理由」裏込め部に根張りさせることから、裏込め部まで貫通させる。
  • ◇穿孔方向:護岸面に垂直。
  • ◇穿孔径:φ750mm。「理由』ネコヤナギの最大幹径80mm程度であること、護岸の安全確保から小径が望ましいこと、孔内への根張り空間を確保すること、竹ポット構造体の設置及び間詰材の充填作業の行い易い最少径等を考慮。
  • 植栽孔の検証:植栽作業前に穿孔深さ・径・孔内の残滓確認を行い、植栽床の整形を行います。(写真-2~写真-4参照)

6.竹ポット構造体の作製
(1)竹ポット構造体の構成材料

本工法は、ネコヤナギを確実に活着させるために竹筒を利用した構造体を作製し、植栽孔に挿入・固定する新技術であり、様々な工夫が成されている特許工法です。
 その構成材料は、1節の竹筒(図-3参照)、ネコヤナギの挿し穂、植付け用土、ナイロン製棒ネット、麻布、麻紐、竹串(写真-5~写真-8参照)等で可能な限り天然素材を利用しており、植栽後は自然回帰させることを考慮しています。
 写真-9は、これらの組み合わせによる竹ポット構造体の完成品です

なお、これらの構成材料について配慮している点は以下のとおりです。

(a)ネコヤナギの枝の構成と挿し穂採取用の親木の同定

挿し穂採取用の親木は、図-4に示すような2~3年生の枝部分を同定して切出し、その中から挿し穂に適する部分を選定します。その理由は以下のとおりです。

  • ●木化が進んでいること
  • ●樹皮が厚く、耐力があること
  • ●萌芽・発根し易いこと
  • ●成長が着実で早いこと
  • ●乾燥しにくいこと
  • ●幹径が適当な大きさであること
図-4:ネコヤナギの枝構成と挿し穂の切出し範囲

また、切出した挿し穂からの選定は、以下の点を考慮しています。

  • ●落葉痕の多いもの
  • ●傷の無いもの
  • ●虫食いの無いもの
  • ●曲りの小さいもの
  • ●皮色が鮮明なもの
  • ●有効長30cmが確保できるもの
(b)用土の採取基準

用土は、対象河川から採取することを原則としています。

  • ●不純物を含まないこと(貝殻、木片、粘土分等)
  • ●粒度分布が良いこと
  • ●きれいな砂礫であること
(c)竹ポット

竹ポット材料は、以下の点を考慮して採取します。

  • ●2年生以上の真竹
  • ●外径=55~65mmのもの
  • ●1節の間隔≧350mm
  • ●肉厚の薄いもの
  • ●曲りの無いもの
  • ●虫食いの無いもの

また、竹ポットの加工は、以下の点を考慮しています。

  • ●長さは、護岸の構造に対応させる
  • ●図-3に示す標準形状で作成し、底部に節を位置づけ、キリ孔を
     6個程度開ける
  • ●側面には3本の斜めスリットを開ける
  • ●天端より2cm(竹串用)と1.5cm(緊結用)位置に交差するよう
    にキリ孔を開ける。

なお、底面のキリ孔と側面のスリットは、初期段階での水分補給路と、裏込め部及び側面周囲への根張りを行わせるための工夫である。

(2)竹ポット構造体の構成材料

竹ポット構造体の作成手順は、前項で示した材料を用いて行いますが、その手順を示したものが、写真10~写真17です。

写-10:ポット材料の長さ・径の検査 写-11:挿し穂の材料の検査
写-12:棒ネットセット及び用土投入 写-13:挿し木のセット
写-14:竹串セット 写-15:用土押え材(麻布)のセット
写-16:麻紐による緊結 写-17:構造体の完成
7.植栽作業

植栽作業は、前記写真-2~写真-4に示す作業を終えた後に継続して写真-18~写真-18に示す作業を行って植栽を完成させます。

写-18:吸出し防止材の挿入 写-19:竹ポット挿入と間詰材の充填
写-20:植栽孔への竹ポットの固定 写-21:植栽後の水やり
8.植栽後の管理

本工法は、生きた植物を取り扱う工法です。したがって、植栽後1年間は、施工担当者として管理を行うこととしており、その作業項目は以下のとおりです。

  • 1)植栽後の活着や成長状態の管理(観察結果は管理台帳に記載)。植栽後1~3ヶ月の間に萌芽並びに活着状態の観察を実施。また、成長不良や枯死した植栽は、適当な時期において再植栽する。
  • 2)1年経過後の休眠期に、初年度に伸びた枝の剪定作業1回実施。(理由:根張りを強固にするため:写真-22~23参照)
写-22:1年目の枝の剪定 写-23:剪定した植栽の再萌芽状態
9.経済性について

ネコヤナギの植栽に関する新技術情報は、NETIS登録技術として広く一般に公開(登録番号 QS080012V)しておりますが、その工事費(直接工事費)の詳細な内訳は以下の通りです。

表-1はNETISにおける公表単価の内訳(施工実績による歩掛調査を基準)であり、図-6は1本当りの費用構成を円グラフ表示したものです。

これを図-7に示すような植栽1箇所における葉張り幅並びに葉張り高を考慮して、有効緑化面積当りに換算しますと以下のようになります。

  • ◇1本の植栽による護岸の有効緑化面積=2m×3m=6㎡
  • ◇1本当りの施工費用(直接工事費)=32,640円
  • ◇有効緑化面積1㎡当りの費用=32,640÷6㎡=5,440円/㎡
図-6:1本当りの費用構成 表-1:NETIS公表単価の内訳
図-7:1箇所の植栽による有効葉張り幅と有効葉張り高の範囲

これに対して、最近の環境整備に利用が多くなっている環境保全型ブロック積護岸の場合の1㎡当りに対する直接工事費を市場価格に基づき積算すると以下のようになります。

  • イ)土工費(床堀、積込み、運搬、埋戻し、締固め、機械器具等) =1,400円
  • ロ)ブロック材料(材工共)                = 13,400円
  • ハ)ブロック積工(コンクリート、砕石、型枠等)       = 8,200円
  • 合計 = 23,000円/㎡

これらの結果を比較すると、ネコヤナギ・エコ工法の1㎡当りの直接工事費は、環境保全型ブロック積護岸の場合の1/5程度となります。

さらに環境保全型ブロック積護岸においては、既設護岸を撤去する場合ではその撤去費用が、新たに護岸を築く場合では土工事や仮設工事費などが別途に必要であり、工事期間も長く、施工ヤードの確保や中規模な施工機械化など環境への負荷も大きくなります。

一方、ネコヤナギ・エコ工法では、工事期間も短く(延長50mで25本の植栽での現地作業は3日程度)、施工機械も簡易であり、施工ヤ-ドも特に必要とせず、総合的に極めて経済的な工法です。

<技術指導>松本技術コンサルタント株式会社 TEL:0979-23-3636(担当/秋本)
<施工協力>内山緑地建設株式会社 TEL:0943-72-2138(担当/吉岡)